浸潤・転移・再発のおおもと「ガン幹細胞」の生体内に棲みつく仕組みを発見

乳癌は、女性における最も発生頻度の高い癌で、医療技術が高度に進歩した日本においてさえ、発病頻度及び死亡率が年々増加の一途をたどっている。

乳癌の怖さは、局所にできた癌を切除しても、やがて骨、肝臓、脳、リンパ節などに転移してくる。


これを乳癌の再発と呼んで、治療後も不安な生活を過ごさなければならない。

一般に行われている治療方法としては、外科的に手術を行うか、抗癌剤投与や放射線治療といった化学療法によって癌細胞を死滅させることだが、これらの治療ではほとんどの場合、不十分であり、乳がん細胞を生み出す幹細胞が残ってしまう。

しかし、近年の研究によって癌発生の元となる幹細胞の存在が明らかになっており、癌研究に大きな変革(パラダイムシフト)を起こしつつある。

2012年4月3日 読売新聞によると東京大学医科学研究所、発表論文

「乳癌幹細胞が生体内に棲み付く仕組みを発見」―癌の根治へ期待

という癌治療 におけるビッグニュースが報じられています。


がん幹細胞は、がん組織のうち、ごく一部の細胞集団であるが、従来の抗がん剤や放射線治療によって、がん幹細胞は死滅されにくいため、転移や再発の原因になる。

 

そのために、癌は未だに不治の病である。がんを根治に導くためには、がん幹細胞をターゲットとした治療法の開発が必要である。

 

しかし、がん幹細胞が生体内に棲み付く仕組みが明らかでないため、がん幹細胞をターゲットとする治療法は、確立されていない。

 

東京大学医科学研究所の後藤典子/特任准教授と日野原邦彦/特任助教らは、がん幹細胞がスフェアという直径100μm程度の球状浮遊細胞塊を形成し、培養皿で培養できることに着目した。

ウエブサイトのブログ「ドロソの気持ち」に分かりやすい説明がありましたので、転記させていただきました。

①ガン幹細胞は、周りに増殖性の高いガン細胞を生み出す。
 

②これらの細胞を集合させ、いわゆる「ニッチ」と呼ばれるガン組織を形成する。

 

③ガン幹細胞自身は、複製能は高いけど、増殖性ではないので、増殖を阻害する抗がん剤が効きにくい。

 

④周りのガン細胞が、死滅しても、また、このガン幹細胞がニッチを作り出す。


つまり、これが再発のメカニズムなのである。

 

ガン幹細胞が残る限り、ガンは再発しやすいと言える! で、今回のチームが何を発見したかというと、 ガン幹細胞が、ニッチをつくるためには、ガン細胞を集合させなくてはならない。

 

その集合させるものは何か・・・。

 

集合させるためには、ガン幹細胞の中で、どのようなシグナルが活性化しているのか それを明らかにしたわけだ。

 

結論を言うと、 次のシグナルが幹細胞内で活性化していることがわかった。

 

EGF→EGFR(ErbB3)→PI3K→Akt→Nf-κB (エヌエフカッパービー)↑ EGFは「上皮成長因子」っていいます。

 

これが、受容体であるEGFR(ErbB3)に結合すると 幹細胞内で、PI3kinaseというリン酸化酵素がアクティブになる。 PI3kinaseは、Akt という因子を今度はリン酸化して活性化する。

 

Aktは、それこそものすごい数のシグナルをコントロールする因子なのだが (Aktの相手を知りたい人は、このCell Signalingのページをクリック) の標的因子にあの「Nf-κB(エヌエフカッパビー)」があった。

 

これが活性化して、遺伝子のスイッチを入れるので、 結局ガン細胞たちが幹細胞の周りに集まって来る。

 

以上が、癌幹細胞の生体内に棲み付く仕組みの姿ですが、まだまだ理解するには 難しく、この説明でもマトをえているかどうか分かりませんが複雑なメカニズムが何とか理解できたのではないでしょうか。

 

出典:「がん幹細胞ニッチ」とは?ウエブサイト「薬学用語」より引用しました。

Nf-κB(エヌエフカッパビー)

従来,がん組織に存在するすべてのがん細胞に無限の自己複製能と未分化能があり,がんを形成できると考えられていた。

これに対して近年,がんは不均一な細胞集団で,そのなかにごくわずかのがん幹細胞が存在しており,この細胞だけが自己複製能や未分化能を有して、がんを形成することができるとする「がん幹細胞仮説」が提唱されている。

幹細胞はニッチと呼ばれる最適な微小環境に存在し,ニッチとの相互作用により幹細胞性の維持や機能の制御が成されている。

この腫瘍微小環境は免疫細胞,炎症細胞,間質細胞,細胞外マトリックス,血管やリンパ管などから構成される。

ニッチは,静止期と分化増殖の2方向のシグナルバランスで幹細胞を制御し,また転移や浸潤にも関与していると考えられている。

(2009.9.30 掲載) 永澤秀子[FYI用語解説(ファルマシアVol.45,No.4)より転載]

今回、このプロセスが明らかにされ、これまでの化学療法では癌幹細胞を根絶できていなかった治療のありかたを根本的に変えられる癌治療のパラダイムシフトとなる可能性が期待されています。

要するに幹細胞は、ニッチという化学療法の抗がん剤投与や放射線治療等が影響を及ぼしにくい、あるいはできない微小環境に存在しており、癌を叩いてもいずれニッチに潜んでいる癌幹細胞によって再び癌組織が形成され、再発癌になってしまうということのようです。

出典:
東京大学 医科学研究所 発表論文 「乳癌幹細胞が生体内に棲み付く仕組みを発見―癌の根治へ期待」 Proceedings of National Academy of Science, USA doi: 10.1073/pnas.111327110

日本の年々増え続ける乳がん死亡者数推移

10年単位での死亡数推移、2005年~2010年は5年間での推移(厚生労働省関連の統計)

乳癌の予防と治療にクルクミンと黒胡椒がガン幹細胞抑制に効果的

【ターメリック(熱帯ウコン)のクルクミンと黒コショウのピペリンが合わさると乳癌を発症させる幹細胞の働きを止められる可能性を見つけた。】

アメリカ、ミシガン州立大学総合ガンセンター(UM)に在籍する研究者によって、ターメリック由来の化合物クルクミンと黒コショウのピペリンを組み合わせると乳癌の予防と治療に重要な役割を果たすことを新たに見つけた。

これまでの研究では、すでにクルクミンとピペリンンの組み合わせは、潜在的にガン治療することができることの証拠が提出されています。

しかし、総合ガンセンター(UM)の今回の研究では、乳癌研究と治療にこれらのスパイス化合物が如何に癌を防ぐことができるかを正確な示唆として始めて公にしています。

この研究成果についてオンラインのジャーナル誌で、クルクミンとピペリンが、幹細胞(臓器のいろんな種類の細胞を増加させる未分化細胞)を標的として示していることが、とても重要で意義のあることだと報じています

がん細胞が、悪性腫瘍の成長をたきつける腫瘍の中でも小さい番号の細胞から構成されており、これらの幹細胞が腫瘍における細胞を制限なく成長を維持させています。

現在の化学療法薬剤は、これらの細胞に対して有効に働いておらず、しかも有害な化学療法が何クールにもわたって行われるので重く耐えがたい副作用と戦わねばなりません。

にもかかわらず、何故再発し、広がってしまうのか。

もし、ガン幹細胞を排除、あるいは成長を止めることができれば、ガンを制御できる はずである。

「我々は、幹細胞の数を制限することができれば、腫瘍を形成する細胞の数を制限できる。」と執筆者マードゥリーKakarala医学博士は、UM医療学校の医局内臨床講義とVAアナーバーヘルスケアシステムの研究調査をメディアに告知しています。

ミシガン州立大学総合ガンセンター(UM)研究チームの研究内容は、人が食事を通して摂取するだろう適量のおよそ20回分のクルクミンとピペリンの溶液を細胞培養液に適応させて、一連のテストを行った。

クルクミンとピペリンの効果を幹細胞レベルで行い乳房細胞のマーカーを観察した。

クルクミンには、ガンを発症させる幹細胞の特徴である自己再生プロセスを中断させる働きがあり、ピペリンがその働きを飛躍的に高めることが確認されています。

もっと素晴らしいことは、これらの化合物が細胞の分化として知られている細胞成長の通常のプロセスには影響しなかったということです。

まさに今、乳癌リスクの高い女性は、予防としての薬剤、タモキシフェンまたはラロキシフェンを選択することができますが、ほとんどの女性は、これらにはあまりにも多くの毒性があるため、これらの薬剤を選択できないでいます。

これらの薬剤は、エストロゲン(女性ホルモン)をターゲットに設計されています。

しかし、より詳細な疾患や乳癌に特異的な遺伝的感受性と通常エストロゲンの影響を受けない強い家族的な経歴を持つ女性が発症する可能性が高く、最も積極的で、致命的な乳癌の種類は治療が困難になる傾向にあります。

クルクミンとピペリンが幹細胞の自己複製を制限した事実によって、幹細胞がエストロゲンに反応しようとしなかろうとスパイス化合物が悪性腫瘍に影響を与えることができた。

以前の研究においても、乳房、大腸、前立腺及び肺がんへの低いリスクとして、ターメリックと黒コショウ、両方の高機能性食品による動物実験においてですが、大腸癌や肺癌の発生を抑制することが示されています。

「クルクミンとピペリンには非常に低い毒性しかないので、食養生の化合物としての考えに、お手伝いできることは大変魅力的です。」執筆者マードゥリーKakarala医学博士は述べています。


出典
米国癌協会ミシガン州保健システムの大学、ニュースリリース、2009年12月8日 「NaturalNews」 2009年12月30日
Scientists find turmeric and black pepper spices may prevent breast cancer

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