すでに線維化したアミロイドベータにクルクミンを加えると線維が分解した

痴呆、認知症の原因として最も多いのが、アルツハイマー病です。

記憶、思考、判断など知的な機能が、徐々に失われていくだけでなく、日常の生活が正常にできなくなってしまう病気です。

現在のところ、進行を遅らせ、症状を緩和する治療方法しかなく、アルツハイマー病を発症する過程とメカニズムを知ることで、予防の大切さを学ぶことができます。

アルツハーマー病の患者の脳細胞に、アミロイド・ベータが蓄積してできるアミロイド・ベータ斑や神経原線維変化は病気の発症原因であるのか、その結果であるかはまだ明らかではありません。

凝集塊は、アルツハイマー病の症状が現われる以前からみられ、やがて大量の老人斑の沈着が、神経細胞死を急速に広げてしまい、認知症(痴呆)を発症してしまう。

近年において、アルツハイマー病の発病と症状にそれらが、何らかの関係をしているということが解明されつつあります。

65~84歳になる6人のアルツハイマー病患者と、3人の健康な人の血液サンプルを使用して、カリフォルニア大学デヴィッドゲフィン医学校のミラノ・フィアラ ( Milan Fiala )氏らの研究チームは、マクロファージと呼ばれる免疫細胞を単離しました。

マクロファージは、ベータアミロイドを含む廃棄物を取り込みながら、脳と身体を回遊する免疫システムの司令塔でもある貪食細胞です。

クルクミンを使った24時間の細胞培養試験で、6人のアルツハイマー病の患者のうちの3人から採取したマクロファージをテストしました。

クルクミンで処理していないマクロファージと比べて、廃棄物の取り入れと処理の改善が示されました。

クルクミンは、アルツハイマー病患者の50パーセントで、免疫細胞によるアミロイド・ベータの処理を改善しました。

健康な人から採取したマクロファージは、既に効果的にアミロイド・ベータを取り除いており、クルクミンを加えても変化は見られませんでした。

これらの初めての発見は、クルクミンは、特定のアルツハイマー病患者の免疫システムの働きを高めるのを助けることを示しました、と研究者は述べています。

免疫が応答した患者は、より若く、簡易精神状態試験 ( Mini-Mental State Examination ) のスコアも高くなりました。

クルクミンはそれほど進んでいない認知症の患者を助ける可能性を示唆しています。

(Journal of Alzheimer’s Disease誌に発表された。)

この他の研究発表として、アルツハイマー病は、脳内で「アミロイドベータ(Aβ)」という物質が線維状に結合して毒性を持ち、付近の神経細胞が死んでいくのが原因とされる。

現在、病気の進行をくい止める決定的な治療法はない。

研究チームはアミロイドベータを含む溶液にクルクミンを加え、線維化が大幅に抑えられることを確認した。

すでに線維化したアミロイドベータにクルクミンを加えると線維が分解した。

金沢大大学院の山田正仁教授(神経内科)と小野賢二郎医師らの研究でわかった。

武蔵野大の発表で、米国ソーク研究所との共同研究により、ターメリックのクルクミン成分で、動物実験を行った結果、記憶力を高める効果が確認できたとのことです。

インドでは、アルツハイマーの患者が少ないことに着目して、同国民の代表的料理であるカレーにその秘密が隠されているのでは、と各スパイス成分について研究を進めたところ、このターメリックにたどり着いたということです。

読売新聞(2008.8.19)

クルクミンを使ったマウスによる実験で、アルツハイマー病の炎症反応亢進の抑制が認められた。

アルツハイマー病患者では脳での炎症反応が亢進していることや非ステロイド性抗炎症薬剤(NSAID)の服用者にアルツハイマーの発病リスクが少ないことから、NSAIDのアルツハイマー病に対する有効性が認められているが、この薬物はシクロオキシナーゼ(COX1)を阻害するため胃腸障害や肝臓・腎臓毒性を有する副作用を持っている。

FrautschyとColeのグループは、抗酸化作用と抗炎症作用を併せ持ち、副作用のないクルクミンに着目して、アルツハイマー病の動物モデルを使った2つの実験を報告している。

ターメリック(熱帯ウコン)をカレーなどの食材として日常的に摂取しているインドの70歳代のアルツハイマー病患者数がアメリカを比較して4分の1程度であることが、その主要成分クルクミンに着目した理由としている。

生後9ヶ月~19ヶ月のラットにクルクミン入りのエサを2ヶ月間与えた後、アミロイドベータを1ヶ月間海馬への注入を行った。

水迷路試験の結果、アミロイドベータ注入による空間記憶の獲得障害が誘発されるのに対してクルクミン投与群では正常群と同じ程度の成績が保たれた。

脳内でのアミロイドベータの沈着やミクログリアの増加に対してクルクミン投与群では抑制効果が示され、シナップス前のマーカーであるシナプス小胞タンパク質シナプトフィジン(synaptophysin)の大脳皮質での発現量はアミロイドベータ注入により減少し、この作用に対し、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID) イブプロフェン(ibuprofen)は無効であったのに対し,クルクミンは改善作用を示した。

アミロイド前駆体タンパク質の変異遺伝子のトランスジェニツクマウスを用いた実験では,クルクミン入りの餌を4か月与えた後,脳内の炎症性因子等の発現が検討されている。

ここでもクルクミン投与群ではアストロサイトやミクログリアの減少が認められるとともに,インターロイキン1β、可溶性アミロイドベータや老人班の発現,タンパク質の酸化のいずれもが抑制された。

クルクミンの抗酸化作用、抗炎症作用は、転写因子NF-kBによって制御されている。

iNOS(誘導型一酸化窒素合成酵素)、COX2(シクロオキシナーゼ2)及び炎症性サイトカインの発現を抑制することにより発揮されるものと考えられている。

NF-kBを不活性型に制御している蛋白IkBはリン酸化を受けることにより分解し,NF-kBを活性型として遊離するが,クルクミンは蛋白IkBαのリン酸化過程や,そのリン酸化酵素である IkB キナーゼ l及び2の活性を抑制することにより,NF-kBの転写活性を減少することも報告されています。

ターメリック(熱帯ウコン)には,主成分クルクミノイドにクルクミン以外にもデメトキシクルクミン(demethoxycurcumin)やビスデメトキシクルクミン(bisdemethoxycurcumin)という成分が含まれており、PC12細胞(ラットの副腎髄質由来の褐色細胞腫で、神経細胞分化のモデルとして使用される)や血管内皮細胞におけるアミロイドベータ誘発による細胞死を,クルクミンよりも低濃度で抑制することが示されている。

とアルツハイマー病の改善に有効であるとして提唱されている。

出典:富山医科薬科大学和漢薬研究所 東田千尋氏レポートより

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