異常な炎症を引き起こす転写因子NF-κBの活性を抑制することができれば!

クルクミンが異常な炎症を引き起こす転写因子NF-κB(エヌエフ-カッパービー)の活性を抑制するといった 細胞の機能にはいろいろな働きを持ったタンパク質によって調節されています。

タンパク質は、遺伝子であるDNAからmRNA(情報に対応する転写産物)が作られてタンパク質が合成されます。このDNAからmRNAを作る過程を転写といい、転写を調節しているタンパク質を転写因子といいます。

NF-κB(エヌエフーカッパービー)は、免疫・炎症反応に関わる遺伝子群やエイズウイルスなどの増殖に関係するタンパク質を作るときに活性化する転写因子です。

慢性リュウマチや骨粗鬆症などの免疫・アレルギー疾患・後天性免疫不全症候群(AIDS)などに関与しているとされ、悪性腫瘍の発ガン過程及び進展にもNF-κBの活性が関わっているとされています。

普段のNF-κBは、IκBと呼ばれる制御タンパク質と一緒に結合して不活性な状態で細胞質内に存在しています。

細胞がウイルスや酸化ストレスなどによって刺激を受けるとリン酸化されて分解します。


IκBが外れたNF-κBは細胞核内へ移行してDNAと結合することで、遺伝子の転写を行います。

ガン細胞でNF-κBという転写因子の活性が高まるとガン細胞はアポトーシス(通常の細胞が、自然死すること)せず、増殖や転移を行って悪性の腫瘍として成長していきます。

しかし、NF-κBは、免疫細胞においても重要な働きをしていますので、NF-κBを阻害することは免疫力を弱めてしまい、本来、私たちが持っている自然治癒力に支障をきたしてしまいます。

NF-κBが活性化するとCOX-2(シクロオキシナーゼ-2)が発現して炎症を引き起こす代表的な物質、プロスタグランジンという生理活性物質が産生されます。

大腸ガン、乳ガン、胃ガン、肺ガン、肝臓ガンなど、ほとんどのガン細胞の成長促進に関与しているだけでなく、腫瘍の成長を促がす新生血管の細胞においてもCOX-2の発現が確認されています。

欧米では、数多くの炎症疾患に対してクルクミンのエビデンスが行われています。

ターメリック(熱帯ウコン)の主成分クルクミンは、強い抗酸化作用や抗炎症作用によって関節リウマチや慢性糸球体腎炎、免疫、アレルギー疾患、エイズ、悪性腫瘍(ガン)など数多くの炎症疾患に係わっているとされるNF-κBという転写因子の活性を阻害する働きが、世界中の研究機関によって探求されており、欧米においては医療現場において、すでに数多くのエビデンス(臨床における証明)が重ねられています。

NF-κB は細胞の生存、活動にとって必須な遺伝子群を発現させる重要な転写因子です。

サイトカインや感染性物質、放射線誘導性、紫外線等の刺激により活性化される。

免疫反応においては中心的役割を果たし、急性および慢性炎症反応や細胞増殖、アポトーシス(プログラムされた細胞の自然死)などの数多くの生理現象に関与しているとされています。


※NF-κB(エヌエフ・カッパー・ビー、核内因子)

NF-κBは転写因子として働くタンパク質複合体である。ストレスやサイトカイン、紫外線等の刺激により活性化される。

NF-κBは免疫反応において中心的役割を果たす転写因子の一つであり、急性および慢性炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどの数多くの生理現象に関与している。

NF-κB活性制御の不良はクローン病や関節リウマチなどの炎症性疾患をはじめとし、癌や敗血症性ショックなどの原因となり、特に悪性腫瘍では多くの場合NF-κBの恒常的活性化が認められる。

さらにNF-κBはサイトメガロウイルス (CMV) やヒト免疫不全ウイルス (HIV) の増殖にも関与している。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


※COX-2(シクロオキナーゼ)

シクロオィナーゼ(COX)-2酵素は、最近急増している肺線がんで著明に発現していることが知られているが、一方正常の肺上皮細胞には発現していない酵素である。

COX-2酵素は、がん細胞に高発現し、がん細胞自身の増殖を促進すると同時に、血管新生を促進し、がん細胞への栄養補給を増加し、更に生体の免疫能も低下させることが報告されている。

COX-2酵素の持つこれら一連の作用を阻害することにより、がん治療を向上させようとする試みが検討されている。

(愛知がんセンターの概要・平成17年度 呼吸器内科部長、樋田豊明)

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